Medical Science Digest
学術研究員のダニエル・ギャラガーさんと太田の共著解説記事が、Medical Science Digestに掲載されました。非侵襲的脳刺激法を用いた言語機能への介入について解説しています。
太田真理、ダニエル・ギャラガー、「非侵襲的脳刺激法を用いた言語機能の向上と回復」、『Medical Science Digest』、ニュー・サイエンス社、51(7)、77–80、2025.
要旨:言語は人間に固有の高次認知機能であり、その神経基盤の解明は認知神経科学の最重要課題である。また、高齢化や国際化に伴い、言語能力を向上・回復させる技術の開発が医学・教育の分野で求められている。筆者らは、非侵襲的脳刺激法(NIBS)を用いて、言語中枢の一つである左下前頭回の活動を上昇させることで、外国語の学習成績を向上させることができることを明らかにした。また、深部脳刺激が可能な経頭蓋時間干渉刺激法により、発達性言語障害やディスレクシアに関わる脳領域を局所的に刺激することができることも明らかにしている。これらのNIBS と、脳波・fMRIに代表される非侵襲的脳機能計測を組み合わせることで、脳活動と言語機能の因果関係の解明が進み、個別最適化された外国語教育や言語リハビリテーションが実現されることが期待される。